立木 勲詩集『ヨンとふたりで』(2016ふらんす堂)より
ふたりのうそ
あなたのつくるみそ汁に
僕らは
朝、一滴のうそをおとす
遠い人からの呼びかけが聞こえ
ふたつの世界の間できしんでしまうあなたと
僕は
この密かな一滴でつながれる
僕は想いをうそに込め
あなたも想いをうそに込める
本当のもろもろは
言葉もなくうそに込められて
そっと奥底に抱かれる
見つめ合う時 眼の中に
手を握り合う時 手の中に
うそは生きているのかと
僕らは黙って尋ね合う
そうして
ああ、味噌汁がおいしいね と
あなたの作る朝げを前に
今日の言葉を
ふたりは確かめる