河口夏実詩集『雪ひとひら、ひとひらが妹のように思える日よ』(2016書肆子午線)より
かりがね
今年はじめての雪が降りだす
冷んやりとした家は
障子とガラスで出来ている
垣根にみえる花が、
紅のように赤い
上から下に落ちていく粉雪が積もる間を
小鳥が鳴くと起きてくる
妹は眠っており
まわりは眠っており
閉ざすと白い障子戸が
表の音を立てている
日々のほとりに咲く草花や、月のうさぎを
切り貼りし
かりがねの群れが形を変えて行く
それは、さざんかが
道に咲くころ
さざんかの花を散り敷いていくうちに
一晩の雪が
この国を造りだすところ
起きてきて
見てごらんよ
遠くの星が火を宿す
てのひらに降る新しい雪
金平糖が降ってくる